被災物は人生の記録

「震災をいかに表現するか、地域の未来の為にどう活かしていくか」というテーマで単に記録資料を残すことではなく、それらを正しく伝えていく。「伝える意思と伝わる表現」を大切に、美術館として蓄積してきたノウハウを駆使し、多様な視点で東日本大震災を表現することに努めたそうです。
被災した人を被災者と呼ぶように、被災した物を「被災物」と表現していました。
報道など一般にはガレキと表現されていますが、瓦礫とは、瓦片と小石を表し、転じて価値のない物、つまらない物を意味する言葉です。被災者にとって被災物は「価値のない、つまらないもの」ではなく、破壊され、奪われた大切な家であり、家財であり、何よりも大切な人生の記録です。ガレキという表現は適切ではないと強く話されていたのが印象的でした。
「反省とは未来を考えること」と捉えているそうです。津波発生を阻止することは不可能ですが、生き方は変えられます。津波を大災害化させないためには、人間が変わるしかない、地域文化を進化させるしかない。災害は、人の大事なものを一瞬で奪っていくのだと、重く感じ取りました。