1/17は、阪神淡路大震災をきっかけに「防災とボランティアの日」として制定されているのよ。
ボランティアかあ~・・・興味はあるけど、大変そうだし、むずかしそうだし・・・ぼくなんかにできることあるのかなぁ
じゃあ実際にボランティアとして活動されている方にお話しを伺ってみましょ!
自分にできることからやってみよう
ボランティア活動を知ろう!
阪神淡路大震災では、災害ボランティアの活動が広く注目されました。災害時における自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を図るため、内閣府によって1月17日は「防災とボランティアの日」と定められています。
相日防災の社員であり、NPO法人「幡ヶ谷再生大学」復興再生部で、災害ボランティアとして各地で活動している中尾志乃さんにボランティア活動についてインタビューしてみました。ボランティア活動の「ホントのところ」を聞かせていただきました。
最初のボランティア活動
陣谷(インタビュアー・以下陣谷)…最初のボランティアはどこだったんですか?
中尾…最初に行かせてもらったのは、2018年の岡山の真備です。その後は年に1回くらいかな。豪雨災害で近隣の県とかであれば行きたいなと思っていて、行かせてもらっています。2019年は台風で屋根が飛ばされた千葉の鋸南と、2021年に熱海と、2022年に清水と川根の方に行きました。
陣谷…実際、どんなことをしているんですか?
中尾…千葉の鋸南は屋根が飛んでいて高所作業が多く、私たちは災害ごみの仕分けや集積所への荷物の運搬などをしました。熱海では土砂だしが多かったです。
去年は、清水のお宅と、ヤヒロラボさんの「川根の茶畑」にお伺いしました。茶葉の泥落としがまだまだ終わっていないとのことでしたので、不定期で伺い今も継続して活動しています。
陣谷…活動は日帰りですか?泊りがけですか?
中尾…基本私は日帰りです。高速道路利用料の減免が出ているのを利用したり、今は旅割が出ているので前乗りしている人も多いです。遠方から朝出発して行くとスケジュール的に無理があったりもするので。
陣谷…体力的にハードな活動をした翌日に、普通に会社に出勤するのは大変じゃないですか?
中尾…私の場合は、仕事のサイクルが3か月ごとに比較的落ち着いた時期と繁忙期があるので、そのタイミングに合わせて活動しています。ちなみに今は仕事が忙しくボランティア活動は休止中。仕事が立て込んでいる時に無理して活動しても疲れてしまうので、「行ける時に喜んで行く」という形です。
きっかけ
陣谷…ボランティア活動のきっかけはなんだったんですか?
中尾…3・11を受け、東北でライブハウスを作る企画を立ち上げた「東北ライブハウス大作戦」プロジェクトや、様々な活動を行っているNPO法人「幡ヶ谷再生大学」などがきっかけです。
幡ヶ谷再生大学(以下「幡再」)は、BRAHMANというバンドのボーカルTOSHI‐LOWさんが立ち上げた団体です。この団体がSNSやライブ会場でボランティアの活動情報を発信したりチャリティーグッズの販売をしていて活動を知りました。
私がライブに行くと必ずフードブースで出店している「ラコスバーガー」のラッコさんが、真備の災害時にいち早くボランティアの活動をしているのを知りました。「ラッコさんが行っているなら、私も何かできないかな?」と感じ、悪ノリじゃないですけど、「あ、夜行バス出てるじゃん、じゃあ行ってみよう!」と(笑)。そんな感じで初めて活動に参加しました。
陣谷…フットワークの軽さがすごい!「私で役に立つのかな?」というような不安はなかったのでしょうか?
中尾…やっぱり皆さん(不安が)あると言いますね。私は逆に、不安より興味の方が上でした。
というのも、私は以前、川のすぐ側の集合住宅の1階に住んでいたので、「豪雨でも来たら完全に水浸かるな」と日頃から不安に思っていました。大阪の実家も海抜3mの平野で、水が来るとすぐ浸かると思っています。私は大阪で阪神淡路大震災も経験していますし、最近はゲリラ豪雨や台風が増えているので、「災害怖いなぁ、他人事じゃないなぁ」っていつも思っていて。災害時、すぐに何が起こるか、どういう状況になってどういう風に人が動くのかっていうのを知りたかったんです。
陣谷…普段から災害に対する意識が積み重ねられていたんですね。
中尾…そうですね。でも3・11のときは何もできなかったです。その頃は都内の飲食店で働いていましたが、自粛モードで、お店に行ってもやってなかったり、やっていても給料が出ないのではというくらいしかお客さんが来ないような状況で…。何かやりたいなと漠然と思っていましたけど結局何もできなかったのがやっぱりずっと悔しくて。それで、小田原に引っ越して、週末に時間がとれる仕事に就いたので、「せっかくだから行ってみよう!」「見てみよう!」というのがきっかけでした。
陣谷…3・11では計画停電など自分のことで精いっぱいで、「自分は何もできない」なんて考えには至りませんでした。
中尾…結局都会の生活に不便が生じるのって最後の最後ですから、わからないものですね。
活動の特徴
中尾…行政は家の中の復旧を中心にしてくれるのですが、畑や農地は管轄外なので触らないんですよ。なので社協さんともやりとりしながら、手の届かない所に声をかけて入らせてもらっています。
農地に入ることと、みんなでご飯を食べること。この2点が他のボランティアと「幡再」の違うところだと思います。活動を続けていく中で、現地の方がその土地自慢のお米や野菜をくれたり、持ちつもたれつじゃないんですけど、北は青森から南は九州までいろんな被災地に(先輩メンバーが)足を運んで土台を作ってくれているので、活動に精が出ますね。
中尾…「幡再」の理念としては、「自分で考えて、自分で行動できる人になる」ということです。あとは「行動だけが現実」ですとか。言っていても何も変わりませんが、「じゃあ行ってみよう!」と一歩が踏み出せるかどうかって結構違うじゃないですか。そうやって踏み出してきた人たちが集まって、その時にできることでいいからと声を掛け合っています。「幡再」は、女性も多く、「何ができるのかな…と思いながら来ました!」という方も多いのですが、皆得意分野の持ち寄りをしています。体力がなくてもこまやかな作業ができる、体が小さいので狭い所に入れる、本業がこういうのだからこんな作業は得意!みたいな感じです。
陣谷…三人寄れば、ってことですね。
中尾…アイデアの持ち寄りは自分の引き出しにないものが多く、(活動は)おもしろいです。
陣谷…おもしろいと言えるのがすごいですね!
中尾…7月の岡山の真備はとても暑かったんですよ。「幡再」は朝の9時から夕方5時まで活動するんですが、相当暑かった日もありましたがみんなで声を掛け合って、熱中症を一人も出しませんでした。
というのも、現地の被災されたお母さんが、日陰になる納屋をボランティアの待機所にしてくれたり、活動から戻ってきた人たちに「タオル貸しなさーい!」と声をかけ、そのタオルを氷を敷き詰めたバケツに漬けてくれたりしてくれたおかげで。今でもまた会いたいなと思います。そういう風に暖かく迎えてくださったり、行ってみないと分からないことがすごくたくさんあります。
2回目の鋸南に行ったときも、ライブに行くような動きやすい恰好で行ったんですけど。そうすると、町の人が(ボランティアの人だと見つけてくれて)声をかけてくださるんです。「今日もありがとう!」って。とても大切な経験です。
陣谷…つらくてやめたい、とは少しも思わないんですね。
中尾…結構みんな笑いながら和気あいあいと活動を楽しんでいます。自分のできることを、無理をしない程度で。
岡山真備の活動では学長が来てくれたり、細美武士さんとか10‐FEETのTAKUMAさんとか、有名なアーティストが来てくれて一緒にご飯食べたりとか。「幡再」で活動している人たちは、なんとなくどこかで「音楽」という共通点があるので、活動中に「あのライブ行った?」みたいな話題があがったりします。
陣谷…行ったものの、その場で何していいか分からなかったりしませんか?
中尾…はい。初めはどこに行っていいか分からなかったので、現地にゆかりのある人たちに下見に行ってもらいました。「何かありますか?」と声かけして、現地の方とよくお話し、何をしてほしいかを一緒に考え、いただいた声をもとに活動しています。家の中の作業が終わったら農地に入ったり、高齢の方から要望があってビニールハウスの解体や竹藪の伐採をしたり。こないだは自然薯を掘って、その自然薯をお昼にいただきました。
陣谷…幅広い体験ができますね!
中尾…ネガティブな話ばかりではありません。活動を通して横のつながりができて、活動で出会った現地の方と最近では飲みに行くくらいで。「今日の熱海はこんな感じだよ」ととれたサザエの写真を送ってくれたりします。
持ち物
中尾…毎回使うものは、手袋、ちっちゃい椅子、柄のないブラシ、バールです。ブラシは壁の砂を落としたり、ものを洗うとかですごく重宝しました。ほうきとちりとりもあるといいですね。スコップ等の道具は社協さんが貸してくださることも多いです。防災備蓄の倉庫から出してくれたりとか。
陣谷…ブラシとか全部現地にあるものだと思ってました。
中尾…できるだけ持って行ってます。あれば便利なものは買い足したりしてます。ゴミ袋としても使えるので、土嚢袋なんかも一応持っていきます。
陣谷…キャンプの準備みたいですね。食事は現地で調達するんですか?
中尾…各地より送っていただいた食材を使ったり、現地に近い人が買ってきたり、あらかじめ切っておいた野菜を、現場でちょちょいと合わせています。
活動初めの頃は現地の状況もわからないので、近くの漁港でお弁当を買って食べたり、町の食堂で食べたり。コロナ禍では集まってご飯を食べられないので、個別で食べられるものを用意するなど工夫しています。千葉のときは、「非常食のカップラーメンがすごく余っているから食べて!」と現地の方からいただいたりしました。
中尾…あとは、軽トラックがとても活躍してます。トラックをレンタルするとなると、オートマだけでなくマニュアルの車もあるので、マニュアルの免許は役に立ちます。
それと持ち物ではないのですが、事前準備としては「ボランティア保険」がすごく便利です。ケガだけではなくて物損も補償の範囲になりますので、作業中うっかり壁を壊してしまったとか、自分たちが良かれと思ってやっている活動がお宅の人にさらに被害を及ぼしてしまった場合でも補償されるので、なかなか良い保険だと思います。500円で1年間補償されます。自分の住んでいる地域の社協じゃなくても、どこの社協からでも入れます。私はお守り代わりにいつも加入しています。
自分のため
陣谷…活動を続けようと思うのはなぜですか?
中尾…何もしていないのに、有事に「助けてくれ!」とは言いたくないんです。毎年何かしら災害が起きている世の中ですし、災害を自分ごととして捉え、「明日は我が身」と思っています。
地元を出てきて、日中は仕事しているので、ただ日常を過ごしていても地域の方とのつながりは希薄になります。ですが、活動で他の地域へ行ったりして顔を出していれば知り合いが増えていきます。それが自分の強みにもなるかな、と。
陣谷…全国に友達がいるってことですもんね。
中尾…結局は「自分ごと」ですね。
陣谷…自分ごととして捉えるって一番大切で、一番難しいことですよね。
中尾…そうしないと、すぐ体が動かないんですよね。ずっと「幡再」に入っている人たちは、どこかで災害が起きたとき「ああ、●●と△△と××が必要だからこれ持ってあっちへ行こう」と動き出しがすごく早いんです。
陣谷…中尾さんがボランティア活動に参加する、その根幹にはやはり地元大阪で体験された、阪神淡路大震災があるんでしょうか?
中尾…阪神淡路大震災のときは、まだ中学生でした。そのときは募金くらいしかできませんでした。私の家ではお皿の一枚も割れず全く被害がありませんでした。ただ、被害の大きかった地域も近かったので、そのあと校外学習で足を運んだりしました。震災遺構もありましたし、ずっとブルーシートがかかっているような場所もありました。あのときは何もできなかったなあって。そして大人になって、3・11のときも結局何もできなかったという気持ちがあり、次何かあったら何かやりたいなと思ったのが、この2018の水害(岡山真備)だったんだと思います。
まずは、やってみよう!
陣谷…興味はあるけど、どこから踏み出せば…と躊躇う人も多いと思います。そんな方へのアドバイスをお願いします。
中尾…災害ボランティアだけでなく、寄付付きの商品を購入したり、海岸のゴミ拾いなんかもボランティア活動の一つです。
書き損じたハガキを集めて被災地に花火を送る団体などもあります。そういう様々な団体の活動を知って、自分の手が届きそうなところだったらやってみよう!と取り組んでみるのはいかがでしょうか。
まずはやってみようかなと思ってもらえたらいいなと思います。他人事じゃなくて。特にコロナ禍で人間関係も希薄になりがちですが、やっぱり人と関わっていくと、大変なこともありますけど、面白いなと思うこともたくさんあります。
現地での作業は義務ではないので、自分の無理のない範囲でやって、ダメだったら休んでOK。「あいつ休んでばっかじゃん」なんて言う人もいないですし、「絶対〇〇をしなきゃいけない」ということはありません。自分が見つけて「やらなきゃ」と思ってやっていることだったり、家主の方の「こうしてほしい」に応えて動いているだけです。ボランティアは仕事じゃないので。
被災者の人は「毎回こんなに来てくれて」とおっしゃるんですが、「いや、みんな来たくて来てるんですよー」と応えています。本当楽しく楽しく、ワイワイやっています。熱海はこんな土砂(写真を見ながら)なのに、なぜかみんな笑顔!っていう感じです。
陣谷…ボランティア、全然思っていたイメージと違いました…!
中尾…家主の人と一緒にお昼ご飯を食べて、その土地のものをいただいたりして、それも話のタネにしながら。
陣谷…知らない人と輪になってご飯を食べるなんて経験、今はなかなかできないですよね。
中尾…ご飯が出るっていうのは「幡再」のいいところです。
私がご飯担当のとき、お昼は豚汁とカレーというメニューでした。カセットコンロと鍋を使って、8人分ものご飯を初めて炊きました。鋸南の新米をいただいたことでプレッシャーもありましたが(笑)、無事成功しホッとしました。
そういうのもやってみないと分からないじゃないですか。炊飯器なしで8人分のご飯を炊いてみようなんて。
陣谷…確かにそんな経験、なかなかできるものではないですよね。
中尾…それぞれの街にそれぞれいいところがたくさんあって。皆さんそこが好きでそこに住んでいる訳で、熱海は(写真では)こんな土砂の風景ですけど晴れている日は海が一面に広がって綺麗なところですし、静かでいいところだって話を皆さん(住民の方々)されるんです。その土地が好きで、災害もあるけど住んでいると聞くと、「もう一度住めるようにしてあげたいな」と自然に思います。
そして、もし次に自分が被害にあったら、真っ先に「助けてくれ!」って手を上げようと思います(笑)。
陣谷…そういう権利があると思います(笑)。(文・陣谷)
自分にできることからやってみよう
・幡ヶ谷再生大学 復興再生部
・東北ライブハウス大作戦
http://www.livehouse-daisakusen.com/index2.html
本日の『備えmemo』はいかがでしたか?
\頭のスミにメモって安心/
できることから少しずつ、防災を自分ごとにしましょう!