「てんでんこ」とは、三陸地方に伝わる「それぞれに」「各自で」という意味の方言です。「津波が来たら、周りを気にせず、てんでんばらばらに、それぞれで逃げなさい」という、命を守るための教えとして語り継がれてきました。しかし東日本大震災では、この教えが浸透していたにもかかわらず、家族を探しに戻ったり、迎えに行ったりして犠牲になった方が少なくなかったといいます。TOHOKU VOICEの取材班が、陸前高田市の伝承施設や地元の方々から聞いた「てんでんこ」をめぐる5つの証言を、ここにまとめてご紹介します。
#035 津波てんでんこ

「てんでんことは『それぞれに』『各自で』という意味の方言だそうです」。三陸海岸には、津波が来たら周りを気にせずてんでばらばらに、それぞれで逃げなさいという教えがあり、そこには「とにかく命を守る」という強い意志が込められています。東日本大震災では、すぐに逃げなかった人が4割ほどいたそうで、その理由の多くが「家族を探しに行った」「迎えに行った」というものでした。まず自分の命を守り、身の安全を確保してから家族を守るべきだと思いました。きっと、お互いに身を案じているのだから。
この話を取材した人:40代 女性 S・I
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#036 共に生きる

「共に生きるとは、地域で防災について考え、訓練をすること。でも一番大切なのは、普段からのコミュニケーションや助け合いの心を持つことだ」。伝承館の解説員・戸羽純子さんは、そう語ってくれました。「あなたの行動が、未来をつくる。生きてこそ、未来がつくれる。生きてこそ、語り継がれる。生きてこそ、これからの防災を考え、知恵を働かせることができる。『てんでんこ』からはじめる」。本当に大切な言葉だと、心に残りました。
この話を取材した人:40代 女性 H・H
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#038 大津波の教訓

「てんでんこ」は、「津波が来たら、周りを気にせず、てんでんばらばらに、それぞれで逃げなさい」という、人々が犠牲になる悲劇を繰り返さないために生まれた教えです。いざそのような事態に遭遇したとき、周りを気にせずに逃げられるか、自分自身を血も涙もない人間だと責めてしまわないか——そうした葛藤を想像しながらも、自身の命を守ることが本当に大切だと感じました。話を伺った後、施設の外に出ると、津波によってすべての松が流され閑散とした街並みの上に、きれいな月が昇っていました。
この話を取材した人:40代 女性 E・K
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#054 普通に生活できることの幸せ

TSUNAMIメモリアルを訪れ当時の状況を聞いた後、「タピック45」「旧ユースホステル」「奇跡の一本松」を、テレビの映像ではなく自分の目で初めて見ました。実際の被害を目の当たりにし、これが自分の住まいで起きたことだったらと想像した時、恐怖を覚えました。夜には民宿旅館沖見屋の畠山さんからも当時の話を聞き、「他人が信用できなかった」という体験や「津波てんでんこ」の教えを伺い、普通に生活していることがどれだけ幸せなことか、身に染みて考えさせられました。
この話を取材した人:20代 男性 Y・O
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#066 教えを守ることの難しさ

いわてTSUNAMIメモリアルの解説員・人首さんによれば、「てんでんこ」を実行するために大事なのは、①避難場所を確認しておく、②避難手段を決めておく、③家族を信じて逃げる、の3つだといいます。三陸地方ではこの教えが9割近く浸透しているそうですが、震災当時の映像には、自宅に車で帰る途中と思われる車が渋滞し、そこへ横から津波が押し寄せ、車ごと呑み込んでいく様子が映っていました。これだけ教えが浸透している地域でも、大事な家族の元に戻ってしまう。実際に震災に直面したとき、教えを守ることの難しさを表しているように感じました。
この話を取材した人:20代 男性 M・W
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施設・団体紹介
2011年3月11日に発生した東日本大震災津波により、私たちは多くの尊い命を失いました。東日本大震災津波伝承館は、先人の英知に学び、東日本大震災津波の事実と教訓を世界中の人々と共有し、自然災害に強い社会を一緒に実現することを目指します。
5つの証言を通じて伝わること
「てんでんこ」という教えは、決して「他人を見捨てろ」という意味ではありません。むしろ「お互いに、相手も必ず自分の命を守ってくれると信じるからこそ、まず自分の命を守る」という、家族への深い信頼の上に成り立つ知恵です。それでもなお、いざというとき教え通りに動くことの難しさを、5人それぞれの証言が異なる角度から伝えています。
「てんでんこ」については、単独記事「TOHOKU VOICE #050 命を守るための判断力」でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。
TOHOKU VOICEについて:このテーマ別引用集は、全社員130名が東日本大震災の被災地を訪れて記録した「TOHOKU VOICE」プロジェクト(全69話)の一部を、共通のテーマで再編集したものです。プロジェクト全体については「TOHOKU VOICE」をご覧ください。スタッフによる被災地視察レポートは「東日本大震災と被災地の記録」でご覧いただけます。
