避難所での生活は、教科書通りにはいきません。TOHOKU VOICEの取材班が聞いた証言には、電気も水道も止まった中で、周囲の人たちと励まし合い、限られた資源を分かち合いながら過ごした人たちの姿が記録されています。ここでは、地域コミュニティの支え合い、消防団としての過酷な活動、避難所運営の心がけ、そして避難生活で本当に困ったことという、4つの角度からの証言をまとめてご紹介します。
#019 東北の人たちの力強さ

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館の語り部ガイド・菊田俊勝さんから、明治・昭和にも三陸地方を襲った津波を経験してきた地元の人たちの、防災意識の高さについて伺いました。「とにかく高台へ」「近所とのコミュニティが大切」という言葉を、繰り返し聞きました。避難訓練通りの避難場所にたどり着いた後も、山の崩れ方や石の転がり方の異変を感じ取り、さらに高台へ登った人が多かったそうです。避難所では、電気も通らず、まだ雪も降る季節の中、ペットボトルのキャップ1杯の水をみんなで回し飲みしながら励まし合い、耐えたといいます。悲惨な映像や写真を目にする一方で、人と人との協力によって生きていこうとする東北の方々の力強さを、強く感じました。
この話を取材した人:20代 女性 A・K
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#019としても、証言の続きをお読みいただけます。
#025 励ましあいながら、父親として

気仙沼市岩井崎にあった民宿旅館沖見屋は震災で全壊しましたが、経営者の畠山さんをはじめ地区の住民は、近くの神社に避難して無事でした。畠山さんは震災の翌日から消防団の活動に加わり、瓦礫で塞がれた道をトラックで進みながら、遺体を担架で小学校まで運ぶという過酷な任務に、約1か月間従事したそうです。消防団員の中には家族を亡くした人もいる中、夜にはお互いに励まし合いながら活動を続けたといいます。「こんな時に無気力になって何もしないのではなく、がむしゃらに仕事をして、格好いい父親の姿を家族に見せたかった」という言葉が、強く印象に残りました。
この話を取材した人:20代 女性 N・T
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#025としても、証言の続きをお読みいただけます。
#055 悲惨な状況下で

同じ畠山さんに、消防団活動中の心境についても伺いました。「様々な悲惨な状況の中、自分の精神を正常に保つことができなかった」と振り返り、避難者の中に人間として醜く、卑怯なことをしている人を目にしたこと、そしてそのように考えてしまう自分自身もまた「醜いのか」という葛藤を抱えていたことを、率直に話してくださいました。「極限の状況下で、私はどうなるのか……今も答えは出ていません」という言葉で、証言は締めくくられています。
この話を取材した人:20代 女性 N・T
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#055としても、証言の続きをお読みいただけます。
#064 災害への備え

畠山さんには、避難生活そのものの過酷さについても伺いました。民宿旅館沖見屋は、地震発生から約40分後に約6メートルの津波に襲われ全壊し、地区の約9割の住居が流出したといいます(同施設は2013年に同じ場所で再建されました)。避難生活では、停電による照明の不足、水道の断絶によるトイレ機能の喪失、トイレットペーパーの極度の不足が大きな課題になったそうです。ソーラーライト・トイレ袋・トイレットペーパーは必需品として備えておくべきだという言葉には、実体験に基づく重みがありました。
この話を取材した人:40代 男性 F・S
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#064としても、証言の続きをお読みいただけます。

インタビューした人:民宿旅館沖見屋 畠山さん
#034 生活の中での心がけ

東日本大震災・原子力災害伝承館の語り部の方からは、避難所生活を成り立たせるための具体的な心がけについて伺いました。「自分たちでやる」「決定事項はみんなの了解を得る」「仲間づくり」「良い考えを実行した人には必ず賞賛」「支援物資の配布には細心の注意を払う」「支援者に感謝する」――こうした一つひとつの心がけと気配りの積み重ねが、被災者どうしの生活の継続を支えていたのだと感じました。将来の災害に備えて、対策や準備とあわせて、家族との日頃の話し合いも大切にしたいと思います。
この話を取材した人:10代 女性 K・F
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#034としても、証言の続きをお読みいただけます。
4つの証言を通じて伝わること
避難所生活の実態を伝えるこれらの証言に共通するのは、行政や誰かに任せきりにするのではなく、「自分たちでできることを、自分たちでやる」という姿勢です。近所とのコミュニティ、励まし合い、役割分担、細やかな気配り――どれも特別なことではありませんが、それを実践できるかどうかが、過酷な状況を生き抜けるかどうかを左右したのだと感じました。
同じ「地域での支え合い」というテーマでは、テーマ別引用集「「津波てんでんこ」に込められた教え」のTOHOKU VOICE #036「共に生きる」でも、普段からの助け合いの大切さが語られていますので、あわせてご覧ください。
TOHOKU VOICEについて:このテーマ別引用集は、全社員130名が東日本大震災の被災地を訪れて記録した「TOHOKU VOICE」プロジェクト(全69話)の一部を、共通のテーマで再編集したものです。プロジェクト全体については「TOHOKU VOICE」をご覧ください。スタッフによる被災地視察レポートは「東日本大震災と被災地の記録」でご覧いただけます。
