東日本大震災では、同じ地域にあった学校でも、その日の判断ひとつで結果が大きく分かれました。宮城県石巻市の大川小学校では、108名の児童のうち74名、教職員10名が犠牲になりました。一方、海抜0メートルに立地していた気仙沼向洋高校(現・気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館)では、生徒・教職員合わせて250名近くが校舎に残っていたにもかかわらず、犠牲者は1人も出ませんでした。TOHOKU VOICEの取材班が現地で聞いた5つの証言を通じて、この対比が伝える教訓をまとめてご紹介します。
#011 命を救うのは判断と行動

大川小学校を訪れた際、校門前で行われていた読経の声が今も心に残っています。「どの選択が正しかったのかは、経験していないわたしには到底計り知れないこと」だと感じつつも、行動の選択によって救えた命があったことは、紛れもない事実だと受け止めました。「命を救うのは『判断と行動』です。時間も、手段も、情報も、マニュアルも、研修も、訓練も、いざというときの『判断・行動』に結びつくものでなければ意味がありません」。本当に恐ろしいのは津波そのものではなく、大事なものを見失ってしまうことなのだと、この場所に立って強く感じました。
この話を取材した人:40代 男性 T・A
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#013 状況にあった判断を

気仙沼向洋高校は海抜0メートルに立地し、震災当時250名近くの生徒・職員が校舎に残っていましたが、犠牲者は1人も出ませんでした。語り部ガイドの芳賀一郎さんは「本当に奇跡だった」と話してくれました。震災直後、先生や生徒たちはマニュアル通りに動くことができず、まず近くの避難所である地福寺へ避難しましたが、そこでもまだ危険だと判断し、最終的には階上中学校まで避難して津波を逃れたそうです。過去の言い伝えに頼るのではなく、その場その場の状況を判断して行動を変え続けたことが、犠牲者ゼロという結果につながったのだと思いました。
この話を取材した人:20代 男性 A・N
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#026 日頃からの準備、想定、訓練の必要さ

同じ向洋高校では、改修工事中だった北校舎に、生徒170名・教員27名に加え、職員20名・工事関係者25名が避難し、一夜を過ごしました。小雪が舞う寒さの中、最上階のカーペット敷きの教室に分かれ、カーテンを取り外したり、置いてあった生徒用の実習着を使ったりしながら暖を取ったといいます。語り部ガイドの菊田俊勝さんの案内でこの校舎を歩きながら、日頃からの備え・想定・訓練の積み重ねがあったからこそ、限られた資源で一晩をしのぐことができたのだと感じました。
この話を取材した人:30代 男性 M・I
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#056 津波、高さ4階までのリアリティ

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館では、被災した向洋高校の校舎がそのまま保存されています。この校舎は4階まで津波に浸かり、校舎に残った人たちは屋上へ避難し、塔屋に上るために机を足場にしたそうです。屋上から津波の高さを見下ろすと、テレビの映像で見ていたよりもはるかに恐怖を感じ、圧倒される思いでした。この実感を、同行した仲間にも伝えたいと思いました。
この話を取材した人:40代 男性 T・Y
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#068 津波の脅威

震災当時、向洋高校の校舎には生徒約170人・職員約50人がいましたが、迅速な避難によって犠牲者はゼロでした。地域特有の防災意識の高さと、日頃の避難訓練の成果が命を守ったのだと、語り部ガイドの小野寺さんは振り返ります。校舎3階、高さ約8メートルの場所には、約200メートル先の防潮堤奥の松林から流されてきた松の木が打ち上げられていました。これほど大きな松の木をここまで運んでしまう津波の力の恐ろしさを、目の当たりにしました。
この話を取材した人:20代 男性 T・U
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5つの証言を通じて伝わること
大川小学校と気仙沼向洋高校は、同じ津波に襲われながら、結果は対照的でした。大川小学校では多くの児童・教職員が犠牲になった一方、海抜0メートルにあった向洋高校では、状況に応じた判断と行動の積み重ねによって犠牲者はゼロだったのです。マニュアルや言い伝えをそのまま守ることと、その場の状況を見て判断を変えること——どちらも大切ですが、いざというときに命を分けるのは、後者を選べるかどうかなのかもしれません。
大川小学校で息子さんを亡くされた三條すみゑさんご本人の証言は「石巻市震災遺構大川小学校語り部 三條すみゑさんインタビュー集」で、戸倉小学校・戸倉中学校・大川小学校の対比についての伊藤さんの証言は「南三陸ホテル観洋・語り部バス案内人 伊藤さんインタビュー集」で、それぞれ詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
TOHOKU VOICEについて:このテーマ別引用集は、全社員130名が東日本大震災の被災地を訪れて記録した「TOHOKU VOICE」プロジェクト(全69話)の一部を、共通のテーマで再編集したものです。プロジェクト全体については「TOHOKU VOICE」をご覧ください。スタッフによる被災地視察レポートは「東日本大震災と被災地の記録」でご覧いただけます。
