石巻市の震災遺構・旧大川小学校では、東日本大震災の津波により、108名の児童のうち74名、教職員10名が犠牲になりました。三條すみゑさんは、この大川小学校で息子さんを津波で亡くされたご遺族であり、今は同校の語り部として、当時何が起きたのかを伝え続けています。TOHOKU VOICEの取材班が4度にわたって聞いた証言を、ここにまとめてご紹介します。
#039 予測していなかった
「まさか大津波が来るとは思いもしなかった」。三條さんの証言の出発点は、この一言に集約されます。大川小学校は北上川の河口から4キロほど離れた場所にあり、過去にも複数回地震を経験していたものの、津波が到達するとは想定されていませんでした。三條さんは家族を津波で亡くした経験を踏まえ、「日頃の準備、訓練で災害を想定し、そのうえで想定外が起こるものだと考えていくことが大切」だと語っています。
この話を取材した人:50代 男性 T・A
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#039としても、証言の続きをお読みいただけます。
#042 命を守る最善策
大川小学校では74名もの児童が犠牲になり、今なお4名が行方不明のままです。「地獄と化した校庭から冷たくなった我が子を泥の中から掘り出し、必死に顔についた土を拭き上げ、声が枯れるまで我が子の名前を叫び、抱きしめていた」。三條さんが語るご遺族の姿は、あまりにも痛切です。この証言から、「災害時、命を守る行動ができること。これが命を守る最善策だ」と受け止めました。大津波警報が出たときは、たとえ山や高い建物が目の前になくても、そこに向かって登らなければ命は助からないという事実を、あらためて突きつけられました。
この話を取材した人:30代 男性 S・O
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#042としても、証言の続きをお読みいただけます。
#043 ありふれた日常
ホテル観洋の語り部バスを降り、南三陸を経由して大川小学校の震災遺構を訪れました。案内役を務めた三條さんは、当時の震災で息子さんを亡くされた方です。私自身も、いわき市で津波により友人を亡くした経験があり、「関係性は違えど、多少なりともお気持ちを感じることができた」と思います。大川小学校での事実、児童の犠牲についての説明を受け、信じられないようなことばかりを耳にしました。この視察を通じて、「ありふれた日常があってこその平和な日々であること、そのありふれた日常を過ごすための準備がとても大事なことである」という気づきを得ました。
この話を取材した人:30代 男性 J・M
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#043としても、証言の続きをお読みいただけます。
#044 今も戦い続ける
現地を訪れ、「外壁は剥がれ、剥き出しになった鉄骨はぐにゃりと曲がり」という震災遺構の姿に、津波の威力の凄まじさを目の当たりにしました。震災当日、揺れがおさまった後、児童・教職員はいったん校庭に避難しました。6年生の児童が山へ逃げようとした場面もありましたが、教職員に制止され、校庭に呼び戻されてしまいます。そして約50分間、校庭で待機していた数十名が、津波に呑まれました。三條さん自身も家族を津波で失いながら、「同じようなことが起こらないように語り伝えていく」ことを決意し、今なお語り部として活動を続けています。「今も自分の知らないところで、戦い続けている人がいることを知った」——この証言をそう締めくくりたいと思います。
この話を取材した人:20代 女性 R・M
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#044としても、証言の続きをお読みいただけます。
4話を通じて伝わること
三條さんの証言に一貫しているのは、「まさかここまでは来ないだろう」という想定の甘さが、取り返しのつかない結果につながってしまったという事実です。それでもなお、ご自身の深い喪失を語り部という形に変えて、次の世代に伝え続けている姿勢そのものが、大きな教訓だといえます。
関連する証言:TOHOKU VOICE #063(語り部・紫桃隆洋氏)
同じ大川小学校を扱う証言として、語り部の紫桃隆洋氏によるTOHOKU VOICE #063「ここまで津波は来ない」もあります。三條さんとは別の語り部による証言ですが、大川小学校の被害の全体像を補足する内容として、あわせてご紹介します。当時、児童たちは近くの裏山ではなく校庭に避難しました。理由は「海から大川小学校までの距離が3.7kmあり、ここまで津波は来ないと思っていた」ためだったといいます。保護者の引き取りを待つため、児童たちは校庭で待機を続けていました。地震発生から51分後、高さ8.6メートルの津波が学校を襲います。「救えた命があったこと、それなのに救えなかったこと」――ご遺族の無念さが伝わってくる証言です。
この証言は、「全部見る」証言タイル一覧の#063としても、証言の続きをお読みいただけます。

インタビューした人:石巻市震災遺構大川小学校 語り部 三條すみゑさん
TOHOKU VOICEについて:このインタビュー集は、全社員130名が東日本大震災の被災地を訪れて記録した「TOHOKU VOICE」プロジェクト(全69話)の一部を、証言者ごとに再編集したものです。プロジェクト全体については「TOHOKU VOICE」をご覧ください。スタッフによる被災地視察レポートは「東日本大震災と被災地の記録」でご覧いただけます。
